フォーチュン
アンジェリーク・・・アンに早く会いたい。

急(せ)く心に比例するように、ユーリスの歩調が自然と速くなる。
その一心で、ユーリスは私室まで歩き、重厚なドアを開けた。

アンジェリークとマチルダは、ドアが開いたバンという音でピタリとおしゃべりを止め、音がしたドアのほうを見た。
そこにユーリスの姿を見たアンジェリークは、すぐさま椅子から立ち上がり、頭を下げた。
アンジェリークが深々と頭を下げたことで、隣にいるマチルダも、慌てて頭を下げる。

「二人とも頭を上げよ」

赤ん坊の頃からユーリスのことを知っているマチルダは、その声に不機嫌さを即感じ取った。

まあ、わからないことはないんだけど・・・。
王子は単純、じゃない、真っ直ぐな心がそのまま表に出るし。

マチルダは、心の中でため息をつきながら頭を上げ、アンジェリークは、恐る恐るといった感じで頭を上げた。
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