フォーチュン
「はい。これは、私が20歳になったお祝いにと、両親が贈ってくれたものでございます。だからか、一際思い入れのある品だったのですが、ディオドラさんや私の命に比べると・・・思い出だけで十分だと。手放すことを躊躇はしませんでしたが、こうして手元に戻ってきて、とても嬉しゅうございます。ユーリス、ありがとうご・・・」

またアンジェリークが最後まで言い切らないうちに、ユーリスは唇で、アンジェリークの唇を塞いだ。

「な・・今の・・・」
「やっと普通にユーリスと呼んでくれた礼だ」

そ、そんな!
これからずっと「ユーリス」と呼ぶ度に、こうしてキスされるのかしら・・・。

嬉しい反面、どうしようという戸惑いが、そのまま顔に表れているアンジェリークを見て、ユーリスは声を上げて笑った。
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