フォーチュン
「そうだろ?ガビーの店のブリトは美味いと評判がある」
「食べたことがあるのですか?」
「ああ何度か」
「本当にこれで2ルキアって・・・なんてお得な」

というより、私は一度も支払いをしていない。
レモネードもそうだし、支払いをしようとするたびにコンラッドに止められる。

『おまえは大切な客人だ。それにドラークの男は、レディに支払いをさせるものではない』

・・・本当にそうなのかしら。
それは疑問だけど、コンラッドの気持ちはそれとなく伝わったので、好意に甘えてご馳走になっている。

「そうだな。夏至祭では自分の利益を考えず、日ごろ恩恵を受けている太陽の灯りや月や星の光、自然と大地の恵みに感謝をするという慣わしが根づいている。それを人々は“夏至祭価格”と呼んでいるのだ」
「素晴らしいわ」
「今日の朝から昼間まで、この辺りはもちろん、ドラーク全土でがらくた市が行われていたはずだ」
「がらくた市?」

この国と人々を誇りに思っているような口調と顔で話すコンラッドの横顔を、私はチラッと見た。

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