フォーチュン
「それで」と言いながら、ユーリスがリストの紙をピンとはじく。

「招待客の漏れはないな?」
「ございません」
「それが重要だ」

ユーリスは、フレデリックが持ってきた夏至祭の日に王宮で行われた宴の招待客リストを、パラパラとめくっていた。
が、ある一点でその手が止まる。

「フレデリック」
「はい、ユーリス様」
「おまえは、宴に来ていたレディ全員のことを覚えているか」
「大方は」

フレデリックがそう言うのならそうなのだろう。
この爺さんの記憶力の良さは、俺も一目置いている。

「ならばここに書いてある・・・バルドー国のアナスタシア皇女について、おまえは覚えているか」

ユーリスの問いかけで、フレデリックは顔を上に上げると、人差し指をチョンとあごに乗せ、目は宙をさまよい始めた。
フレデリックが記憶の糸を手繰り寄せるときの、いつものポーズだ。
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