フォーチュン
ドラーク王国、王宮内。
とある薄暗い一室で、占術師・愚者(フール)は、タロットカードをシャッフルしていた。
その中からおもむろに一枚引き抜く。

「・・・犠牲、犠牲、犠牲。必要な自己犠牲という運命。アンという娘よ、そなたはどこへ行かされるのだ・・・」

そう愚者はつぶやきながら、「12・吊るされた男(ザ・ハングドマン)」のカードをじっと見ていた。
すると、窓を閉めきっているはずの室内に、一陣の風が吹いた。
途端、「吊るされた男」のカードがフワッと舞い上がり・・・正位置から逆位置へと変わった。

「そなたは、この試練に耐えられると申されるか。この無意味な犠牲に、そなたは耐えると申されるのか。運命の輪が噛み合うときが来るというのか・・・」

しわがれた愚者の声音に、珍しく己の思慮が入り混じっていた。
< 75 / 318 >

この作品をシェア

pagetop