フォーチュン
愚者が男なのか女なのか、誰も知らない。
そのしわがれた声から、かなり年を取っていることは分かっているが、愚者が王宮入りをし、占術師となった30年以上昔からずっと、愚者の外見は変わっていないと言われている。

これは余談だが、前占術師であった女教皇は、その名前から、女性であると推測はされていた。
しかしその域を超える確証は、誰も持ってはいない。
そして女教皇も占術師であった何十年の間、ずっと外見は変わっていなかったと言い伝えられている。
そのような神秘性を持っている占術師は、人間ではないという説がまかり通っている。

愚者は元々人間の青年で、女教皇の「お告げ」を受けた途端、今の姿になり、同時に占術師として生まれ変わったと思っている者。
いや、最初からあの姿で何百年も生きておられると思っている者。
そうではなく、生命の木からあの姿で「誕生」をしたのだと思っている者。

このように、人々は様々な憶測を持ってはいるが、共通しているのは、「だから人間ではない」ということだ。
そのことに対して人々が恐れないのは、占術師が貪欲で強欲ではないから。
そして占術師は、ドラーク王国にとって、繁栄の象徴のひとつでもあるから。

だから人々は、占術師という存在に畏怖の念を抱きながらも、ごく普通に受け入れているのだ。

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