フォーチュン
「どうした愚者よ」
「・・・剣はあらゆる事柄だけでなく、絆をも絶ち切る。天秤は公平さを表す。秤が揺れ動くとき、そこにあるのは・・・不正。隠匿をするような行為」

そうつぶやきながら、愚者は「11・正義(ジャスティス)」の逆位置になっているタロットカードを、スッと前に差し出した。

それを見た全員が、ハッと息を呑む。

「1を二つ続けて書く、それが11という数。始まりが2つ。正義と偽り。善と悪。対極のものが同時に背中合わせの状態、それがこの物質界の成り立ち・・・」
「おまえは、アナスタシア皇女が何かしらの隠匿行為を働いているとでも言いたいのか」

そう愚者へ問いかけたユーリスの両手はこぶしに握られ、ワナワナと震えている。
そして、眉間にしわを寄せて「神のメッセンジャー」である愚者を睨みつける形相は、誰が見ても思わずたじろいでしまうほど、怒り心頭状態になっていた。
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