フォーチュン
どれくらい泣いていただろう。
もう十分すぎるほどたくさん涙を流した、と思ったアンジェリークは、頬に残る清らかな涙を指でそっと拭うと、椅子から立ち上がった。
そしてヒクッとしゃくり上げながら、自室にあるバスルームへ向かった。

ザーッと流れる冷たい水を手で掬(すく)い、バシャバシャと顔を洗う。
そしてフカフカしている真っ白なタオルを、顔にそっと押し当てながら水滴を拭い取ると、正面に映る鏡で自分の顔を見た。

目は腫れていない。良かった。
鼻が赤くなっているのは、すぐ良くなる。

「コンラッド」

どうあがいても、私はコンラッドのことが好き。
だから・・・だから私は・・・ウィリアム王子と結婚はできない。

お母様、お父様。
私はコンラッド以外の御方と、結婚することはできません。
だから私は皇女という身分を捨てます。
バルドー国を、王家を、王宮を去り、コンラッドがいるドラーク王国へ行きます。

行き着いた自分の決意に賛同するかのように、アンジェリークは持っていたフカフカのタオルを、ギュッと握りしめた。

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