フォーチュン
・・・怖。

アントーノフにとって、ユーリスは自分の子どもほど歳の差がある若い男なのに、その威厳と威圧感に思わずたじろいでしまった。

「俺はただ、皇女の部屋で会いたいだけだ。その場に女帝と帝が同席をしてもらっても全然構わない」
「ユーリス王子にわざわざ御足労願うのは申し訳ないと思いましたが、王子自らそうおっしゃるのでしたら」とヴィヴィアーヌは滑らかな口調で言うと、スッと優雅に立ち上がった。

さすがは女帝。
たとえ内心はうろたえていても、それを表に出すことのない余裕はまだある。
続けてユーリスが立ち上がったのを見たヴィヴィアーヌは、「さ、あなたもご一緒に参りましょう」と言うと、まだ座っているアントーノフに手を貸して立ち上がらせた。

「あ、ああ、すまんのう」

少し恥らいながらハハハと笑う帝の顔は、どことなくアンに似ていると思う。
アン・・・。
やっとおまえに会える。
待たせたな。

ユーリスがフッと笑ったことで、ヴィヴィアーヌとアントーノフは、ユーリスがどれほどアナスタシアのことを想っているのかが伝わり、ホッと安堵の息をついたのと同時に、その場は和やかな雰囲気に覆われた。
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