私の吸血鬼
「・・・危なかった」



部屋に入ったままドアを閉めた後、私は安堵のため息をついた。



美名子さんに言ったことは丸っきり嘘。



実は、トイレに行ったと私が言った皆は、今この部屋にいる。



布団の上に散らかった服の中には、明らかに下着にしか見えない物体もある。



さすがに家の中を全裸で歩き回るようなお馬鹿は百瀬家にいない。



バッ━━



私は勢いよく毛布をはぐった。


・・・コロン



毛布をはぐると、黒い丸い物体が表れる。



掌サイズの身体に尖った耳、豚のような鼻。



そしてなにより、角張った黒い羽。



うん。



布団の上にいるのはコウモリ。



彼が私の義弟、皆だ。
< 8 / 37 >

この作品をシェア

pagetop