未定
別れ
 「どういう事?」
光に反射してキラキラと艶のある長い黒髪を、かきあげながら不満そうにいう彼女は、桐岡美桜(きりおかみおう)。
5分前まで俺の恋人だった女だ。
 「ん?何が?」
怠そうに煙草を銜えている俺は、面倒くさそうに美桜に目を遣る。
 「どういう事?あたし、何かした・・・?言ってよ、悪い所があれば直すから・・・。」
 「いや、そういう事じゃないんだけど・・・」
涙を溜めて縋りつく美桜は、いつものプライドの欠片さえ見つからない。
 「こんな所で泣かれても困るんだけど・・・」
俺の冷たい態度に益々、本気で泣き始めた美桜は人目も憚らず大声で泣き始めた。
ここは、夜の街の奥の奥にあるラブホ街だ。
すごい目立つ、周りは見て見ぬふりをしてくれる。
夜の街、空気感、少し感じる嫌悪の視線、そして美桜の泣き声。
 「お前、どうしたいの?俺とどうなりたいわけ?」
不機嫌な声色になるのも仕方がない。

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