アイ・ラブ・ユーの先で


だけど、思い出さなきゃいけない。

わたしが家族に対してなにを言い残して飛び出してきたのか、きちんとぜんぶ思い出して、全員分のゴメンを抱えて、家に帰らないといけない。


「帰りたいのか」


“ごめん、いまから帰るね”

短い言葉だけを入力し終え、送信ボタンを押そうとしたところで、いきなり降ってきた声がそれを止めた。


「おまえはいま、本当に家に帰りたいと思ってんのか」


なぜか、鼻の奥がつんとする。
せっかく止まった涙が逆流してきそうで、うまく息を吸えなくなる。


「だって……帰らないと、心配」

「心配するな。ひと晩くらい帰らなかったところでおまえの居場所はなくなったりしねえから」


そうじゃない。
わたしは、いま、心配をかけるから、と言おうと思ったんだ。

でも、本当は、本当の気持ちは、そうじゃなかったかもしれない。


「そんな顔して、そんな中途半端な気持ちのまんまで、帰ってどうするんだよ。またおまえはこれまで通り、オニイチャンとイモウトのあいだでいじけるだけなんじゃねえのか」

「……べつに、いじけて、なんか」

「いじけてんだよ」


冷たいポニーテールの頭に、ぽこんと、なにかあたたかいものが乗っかった。

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