アイ・ラブ・ユーの先で
「おまえはもう、ずっとな、いじけくさってんだよ。自分だってオニイチャンとイモウトみたいになりたくてたまらないくせに、なれなくてもいい、そもそも望んでないって、諦めたふりしてるだけだろ」
ちがう。
「おまえはそうやってずっと自分の心を保ってきたんだ。諦めたふりして、欲しくないふりして、精いっぱい自分を守ってきたんだ」
ちがう。
「それでもどうにも諦めきれないんだろ? だから、泣けて、泣けて、しょうがないんだよ、おまえはいつも」
頭の上の優しいてざわりが、ぐりぐり、ぐりぐり、自分さえ欺き通してきた気持ちを押しだすように、動きはじめる。
もうすっからかんになったはずの目から、ウッカリまた涙がこぼれそうで、そうしたらまた言わなくてもいいことをウッカリ口にしてしまいそうで、懸命に我慢した。
「……わかったようなこと、ばっかり」
「わかってるからな」
「なんなんですか。後輩のメンタルぼろぼろにしてそんなに楽しいですか」
「おまえさ、そうやって俺にするみたいに、家族にも生意気なことほざいてみろよ」
先輩はわたしの頭を撫でる手を止めたかわりに、こっちの手から簡単にスマホを取り上げると、もう送るばかりだった文章をすべて消去してしまった。
「たしかにおまえはまだひとりでやっていけるほど大人じゃない。でもな、おまえはもう、ひと晩くらいの家出すらできないほどのガキでもないんだよ」
大人でも、子どもでもなくて。
そう、わたしは、兄でも、妹でもなくて。
だけど――