アイ・ラブ・ユーの先で


「あ、佳月ちゃん、急に呼び出しちゃってごめんね。久しぶりだね」


相変わらず砂糖菓子みたいに甘ったるい雰囲気。

もともととろんとした印象のたれ目が、溶かされたようにへにゃりと更にやわらかくなり、のんびりわたしを見下ろした。


「こないだは突然おつかい頼んじゃったりしてごめんね? ホントありがとう。いやあ、あのあと昂弥からすっごい怒られちゃってさー」

「あ……いえ、こちらこそ、ありがとうございました」


自分でもなんのお礼なのかよくわからないけど、なんとなくこう言うのがいちばんしっくりきたので、ぺこりと頭を下げる。

佐久間先輩は満足そうにニンマリ笑うと、「行ってよかったでしょ?」と首をかしげて言った。


「ところで、そっちのコはお友達かな?」


いきなり目をむけられた結桜があわてて頭を下げる。
頂点付近で結わえられた無重力なポニーテールが、ぽよんと軽快に揺れた。


「あっ、はじめまして、こんにちは、畑本結桜です!」

「どうもー、こんにちは。佐久間澄己です。で、こっちが奥一慶っていいます。よろしくねー」


自己紹介をしたのか佐久間先輩に訊ねられると、奥先輩はかなり面倒くさそうに「した」と言った。


「というか、あの、わたしになにか用事でしたか……?」


おそるおそる聞いてみる。

どんなにあたりを見渡しても、水崎先輩の姿はやはりどこにもなく、こうして呼び出されている理由は謎のままだ。


「あ、そうそう、そうだった、佳月ちゃんにね、今度はおれたちが昂弥からおつかい頼まれてて」

「え……」

「なんか、服? って言ってたけど」

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