アイ・ラブ・ユーの先で
口の部分を丁重にシールで留めた、茶色の紙袋をぽこんと渡される。
レディースもののブランド名のロゴ。
これは、たぶん先輩じゃなく、仁香さんが用意してくれたのだろう。
「ていうかさ、ぜんぜん詳しいこと教えてもらえなかったんだけど、昂弥が佳月ちゃんの服持ってるってどういうこと? ちょっと、おれ、まったく聞いてないんだけど。いつからそういうことになってんの?」
ちゃんと答えられなかったのは、男の先輩から女子みたいなテンションで質問されて、気おされてしまったせいじゃない。
「え、なに、佳月ちゃん、なんでそんなむくれた顔してんの?」
そうだよ、だって、こんなのってあんまりでしょう。
「……なんで、水崎先輩本人が持ってきてくれないんですか」
相手が優しくて甘い雰囲気をしているから、取り繕うことも忘れてついついすねた顔をしてしまう。
佐久間先輩は少し目を丸くしたあとで、納得したようにうなずくと、いまわたしに手渡したばかりの紙袋をもういちど奪っていった。
「ああ、ね」
手のひらが軽くなった瞬間、はっとして、いきなり恥ずかしくなった。
あわてて顔を上げたけれど、もはや時すでに遅し、のようで。
佐久間先輩はぜんぶを見透かした感じの目をして、ニヤニヤ笑っていたのだった。