アイ・ラブ・ユーの先で


「そうだよね。昂弥に言っておくよ。ちゃんと自分で会いに行かないとダメじゃんって」

「……会いに、じゃないです、べつに」

「そう? おれには佳月ちゃんが昂弥に会いたそうに見えるんだけどな」


いまさらだけど、もしかすると、佐久間先輩という人は水崎先輩の比ではないのでは。

なにって、人をおちょくる才能において。


「澄己。いいかげんにしとけ」


なだめるようにあいだに入ってくれた奥先輩が、その半分ほどの薄っぺらい肩をたたく。

佐久間先輩はへらりと笑い、「だって佳月ちゃんがかわいくて」と、微塵も思ってもいなさそうなジョークを軽々しく口にした。


「じゃ、きょうのところは退散するよ。でも昂弥だけじゃなく、たまにくらいおれたちの相手もしてねー」


ひらひら、ゆらゆら、軟体動物のように振られている手を見送りながら、やっぱりなんだか意外だなあ、と思わずにいられない。

奥先輩はさておき、佐久間先輩みたいな人と水崎先輩が仲の良い友達どうしだなんて、なんとなくあまり信じられなくて。


「なに、あれ……」


先輩ふたりの姿が完全に見えなくなったところで、隣にいた結桜がふいに漏らした。

ほんとだよね、つきあわせてゴメン、と言いつつふり向いたら、想像していたのとぜんぜん違う表情がそこにあって、面食らった。

その、ほんのり赤らんだ、くしゅっとした顔は、何事?

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