アイ・ラブ・ユーの先で
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けっきょく水崎先輩から連絡があったのは、それからさらに2日経ったあとで、おまけにその電話の発信元はバイト先のガソリンスタンドだった。


佐久間先輩がなにかおかしなことを伝えていないか多少不安だったけど、わりとふつうな感じで、ひとまずほっとする。

あしたの朝は何時ごろ駅につくのかと、用件は簡単な質問のみ。到着予定時刻を伝えたら、彼はわかったと言っただけで、すぐに電波は途絶えたのだった。


なんだか拍子抜け。
いつも、うんざりするほど無駄口を叩いてくるくせに。

ひょっとしたら忙しくしているのかもしれない。

直接持ってきてほしい、なんて、よく考えたらかなり面倒くさいことを言ってしまったかもしれない。



翌日、最寄りの改札を抜けて、それとなくあたりを見回しただけなのに、その姿は魔法みたいに、ほかのすべてをかいくぐってわたしの視界に飛びこんできた。

やっぱり目立つ存在だな、と実感する。

入学式の翌日、人ごみの下駄箱でも、わたしはこんなふうに先輩の姿をすぐに見つけることができたんだ。


制服姿だ。きょうはこのままちゃんと登校するつもりなのかな。


「先輩っ、おはようございます」

「よう」


駆け寄ってきたわたしの背後に目をやり、なにか確認したような顔をしたあとで、先輩はやっと腰かけていた鉄柵から立ち上がった。


「え、なんですか? うしろ……」


なにも言わずに歩き始めた先輩の隣にならび、訊ねると、高い位置の横顔がちょっと笑った。

いつも通りの表情で、なぜかひどく安心してしまう。

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