アイ・ラブ・ユーの先で


好きだって、かなりめちゃくちゃではあったけど、けっこうしっかり伝えたと思う。

それで、たぶん……先輩のほうも、そうだって。

たしか、聞き間違いじゃなければ、そう言ってくれたはずだよね?


正直、ぜんぜん記憶がしゃんとしていない。

あのときは本当にいっぱいいっぱいだったんだ。


「……つきあってるのかな?」

「え! つきあおう、って言ってくれなかったの?」

「うーん。なんていうか、もはやそういう感じじゃなくて……」


好きです、つきあってください、的な。
そういうテンプレートには、どうみても当てはまらないやり取りだった。


思い出そうとすると胸のいちばん奥がむずむず疼いて、かゆくてたまらなくなるから、ひとつひとつの記憶を丁寧になぞることさえ至難のわざだけど。


あのとき、わたし、なんと言ったのだろう。

先輩はなんと言ってくれたのだろう。


いったいどのくらいのあいだ、わたしは泣きじゃくっていたのだろう。

いつからアスファルトに座りこんで、いつまで抱きあっていたのだろう。

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