アイ・ラブ・ユーの先で


「……侑月」


ベッドの淵に腰かけ、やわらかな髪を撫でながら、そっと呼びかけた。

起きないままでもかまわないと思ったけど、素直な妹は姉の声に反応し、緩やかな速度でまぶたを持ち上げたのだった。


「ん……お姉ちゃん?」

「おはよう。これからみんなごはん食べるけど、侑月はどうする? 食べられそう?」


なるだけ優しい声、口調を心がける。

侑月はしばらくぼうっとしたあとで、声には出さないで、いらないと小さくかぶりを振った。


「……ねえ、侑月」


寝顔を眺めながら、頭のなかに思い浮かべていた疑問たち。

それをぶつけるべきか、やめておくべきか、悩んだふりをして、本当は1ミリも悩んでいなかったかもしれない。


「どうして急に学校に行けなくなっちゃったの?」


信じていたんだ。
どこかで、きっとわたしは驕っていた。

最近やたらにわたしといっしょに寝たがる侑月は、式くらい登校しろ、と平気で言い放ったお兄ちゃんのほうでなく、こうして気持ちに寄り添うことのできるお姉ちゃんの進む道のほうへ行きたがるはずだ、って。


「……お姉ちゃんに、関係ない」


だけどわたしはスーパーマンじゃない。

逆立ちをしたって、お兄ちゃんみたいに、侑月に憧れてもらえるような、かっこいい存在にはなりえない。

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