アイ・ラブ・ユーの先で
「で、おまえはまた、俺のところに逃げ込んでくるつもりか?」
そう言われて、はじめて鼻がつんとした。
侑月にぬいぐるみを投げつけられたときも、お母さんに泣かれたときも、こうはならなかったのに。
だって、その言い方は、決していいとは言ってくれていないふうに聞こえる。
「ダメなら、いいです」
「じゃ、どうするんだよ。おとなしく帰んの?」
「べつに……」
そういういじわるにも、いまは歯向かっていけるほどの気力がない。
すると、いきなり、頬に冷えたグラスをくっつけられた。
「しょうがないやつだな」
半分以上が減ったそれを手のなかに返される。
先輩は本当に、人のドリンクを勝手に飲みがちな男だと思う。
「じゃ、おまえの気が済むまで、ふたりで暮らしてみるか」
「――え?」
いま、なんて?
とても、にわかには信じられないようなせりふを言われた気がするのだけど……。
「おまえ、“一生”、家出したいんだろ? しょうがないからつきあってやるよ」