アイ・ラブ・ユーの先で
「嫌いじゃない……、嫌いじゃないはずです、わたし、妹のこと、かわいくて、大好きで、大切で、今回のこともすごく心配で……。でも、ずっと、疎ましかった、うらやましかった、妬ましかった、そういう気持ちが……ずっと、完全にないわけじゃなかった」
お兄ちゃんに対してもまったく同様だ。
かっこいいお兄ちゃんのこと、大好きだし、自慢だし、とても誇らしく思っている。
でも、その裏側で、本当はずっと、ずっと、疎ましくて、うらやましくて、妬ましかった。
だって、あんなにたくさんのものを与えられておきながら。
お父さんとお母さんの期待を一身に受けながら。
自分勝手に大学には行かないと言い放ち、イラストレーターになると一方的に宣言して、高額なはずの塾を黙ってやめて帰ってきて。
侑月だって、家族や親戚じゅうから猫かわいがりされておきながら。
欲しいものを欲しいままに、ぜんぶ独占しておきながら。
ろくに理由も言わないで自分勝手に学校を休み、いっしょに寝たいとさんざんわたしに甘えてきたくせに、お姉ちゃんにはわからない、と泣きわめく。
お父さんと、お母さんも。
お兄ちゃんや侑月にはなにも言わないくせに、聞き分けのいい、手のかからない、そのはずだった“真ん中”が少しそうじゃなくなっただけで、泣き崩れたり、出ていく背中にむかって怒鳴ったりする。
みんな、いつも、自分のことばかり。
それならわたしは、なんのために、誰のために、あの家のなかに存在していたの。
わたし以外の4人が快適に生きていくためだけに、ひょっとして、産み落とされたの。
――わたしは、なんのために、生まれてきたの。