アイ・ラブ・ユーの先で


ぱちり、ぱちり、と。

体じゅうのあちこちに散らばっていた無数の破片が、静かに中心へ移動しながら、形を整えていっている気がした。



“サトウラ”


わたしはその響きをよく知っている。

いまのいままで忘れていたはずなのに、耳にした瞬間そう感じずにいられなかったのは、たぶん、ずっと、それを思い出したいと強く願っていたから。


“さとくん”は、名前をもじって呼んでいたんじゃない。

苗字になぞらえて、わたしは彼を、そう呼んでいたんだ。


脳、心、体のなか、ぜんぶを、湧き水のように記憶がぶり返している。

下の名前、フルネームは、たしか、そう。



あの子の名前は、

――“さとうら・こうや”だった。



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