アイ・ラブ・ユーの先で



なんでもない顔で銀河くんを見送ったけど、先輩の帰りを待っているあいだ、ほかのなにも手につかないほど体が震えていた。


わたしの初恋の男の子の“さとくん”は、十中八九、水崎昂弥で間違いないと思う。

もし別人だとしたら、名前の完全一致という、あまりにも奇妙すぎる偶然が起きていることになる。


だけど――



「ただいま」


陽が落ちる寸前に帰ってきた先輩は、銀河くんが持ってきてくれた扇風機に反応し、すぐさま涼をとりはじめた。


「これ、昼間来た?」

「あ……うん、銀河くん、いきなり来たからビックリしました」

「驚かせて悪いな。いつでもいいって言ってあったんだけど」


ハンディタイプの扇風機が生み出すそれよりもずっと強い風を受け、気持ちよさそうにしている横顔に、もうずいぶんおぼろげな記憶をぺたりと重ねあわせてみる。


やっぱり、ぜんぜん信じられない。

先輩は本当にさとくんなんだろうか?
そもそも、さとくんって、どんな顔をしていたっけ……。


「なんだよ? 突っ立ったまま、人のことじろじろ物色して」

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