アイ・ラブ・ユーの先で


「おまえ、さっきから変」


銭湯から帰ってきて、ふたりでアイスを食べている途中、先輩が訝しげにわたしの顔を覗きこんだ。


仁香さんからカラスの行水と評価されていたように、先輩は本当にお風呂の時間が短い。

だから待たせてしまうのが申し訳なくて、2日目は懸命に早く済ませて外で待っていたのに、ゆっくりしてこいと逆に叱られてしまった。


それからというもの、待ち時間に銭湯の目の前にあるコンビニでアイスを買うのが、先輩の定番らしい。

わたしに邪魔されずに好きなものを選びたいのだといじわるに言われたけど、ちゃんとふたり分を買ってくれるあたり人の良さがにじみ出てしまっているんだよなあと、いつも顔が緩んでしまう。


「変って、どのあたりが」

「なんか聞きたそうな顔してるだろ、ずっと」


そんな先輩のきょうのチョイスはソーダアイスだった。

しゃく、と、涼しい音ごときれいな形のくちびるに吸いこまれていくのを、窓から差しこむ月明かりが淡く照らしだしている。


「べつに……」


聞きたいことなんかないです、と言いかけて、言葉を止めた。

しっかり目が合った瞬間、先輩がわたしを拒んでいないことを、はっきり理解できたから。

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