アイ・ラブ・ユーの先で


聞きたいことがあるなら、聞いてもいい、と。
わたしを見下ろす瞳がそう言ってくれている。

勘違いじゃなく、自惚れじゃなく、感じられる。


「……うそ。実はいっこだけ、あります」


本当は、ひとつぽっちじゃないけれど。

できるなら、隅から隅までぜんぶ、聞いてしまいたいけれど。


でも、たったひとつだけ、いまぶつけられるとするなら、そうしたいことはとっくに決まっていた。


「先輩は……ひょっとして」



タイミングが悪いことに、ちょうどそのとき、足元に置いていたスマホが短く震えた。


何気なく目を落とす。

液晶に表示された通知のバナーを流し読みした瞬間、その他の思考などすべて消え去り、わたしは画面から目が離せなくなってしまった。


それは、暗転してからも、ずっと。

その場から動くことも、顔を上げることもできず、足元に無造作に転がっている薄っぺらい機械を、タチの悪い呪いでもかけられたかのように、ただ眺めつづけるしかなかった。



「佳月」


どうした、と問われている。

鼓膜を通過せず、直接脳にむかって響いてくるようなその声に、ぐわんぐわんと頭を揺さぶられているような感じがする。


「お……にいちゃん、から、メッセージが」

「兄貴、なんて?」

「お母さん」

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