アイ・ラブ・ユーの先で
「おまえも“プディン”、食いたいの?」
「……ウン、でもおかね、ないから」
「買ってやろうか?」
「えっ、いいの?」
「でも、俺の金じゃないから、誰にも内緒な」
たぶん間違いなく、それが彼からの、はじめての餌付け。
売店の目の前にあるベンチにならんで座り、なんの変哲もないプリンを、まるでご馳走のように頬張った。
インフルエンザから回復したあとに食べるそれは、比喩でなく、本当にそうだった。
プリンを買ってくれた彼は、“さとうら・こうや”と名乗った。
「さとう、りゃ、こ……うゃ」
「は? なに? へたくそすぎだろ」
「う……」
「おまえ、サトの部分しかマトモに言えないのかよ」
彼がケタケタと笑い転げる。
「いいよ、じゃあ、その部分だけで」
「ん……、さとくんってよんで、いい?」
「うん、それでいい」
さとくんは、あのころから、笑うと目尻に小さな皺の刻まれる男の子だった。