アイ・ラブ・ユーの先で
おまえはどうしたいんだ、と目だけで問われている。
とても困っているのが見てとれて、いじわるばかりしている仁香さんや、それに対してなにも言わないでいるお父さんやお母さんの気持ちが、少しだけわかってしまった。
先輩の部屋がいいです、
という気持ちをこめて、わたしは無言のまま、うなずいた。
「……あ、そ。なら、好きにすれば」
4対1の完全な劣勢だということを理解したのか、諦めたようにつぶやいた先輩が、レンジからアスパラベーコンを取りだし、やけくそに食べはじめる。
ふっふっふー、なんて楽しげに笑ったのは仁香さんだ。
「じゃあ、昂弥、あたしたちお風呂まで済ませて寝る準備万端だから、先に佳月のこと部屋に案内しとくね。早めにおいでねー」
ちょいっと上げられた瞳が、もうなんでもいい、好きにしろ、と言っている。
悪いことしちゃったかな、と頭の片隅に多少の申し訳なさも生まれたけど、いつもおちょくられてばかりいるので、たまにはこんなのも許してほしい。
仁香さんは言葉通り、わたしを連れて先に2階へ上がると、さも当然みたいな顔で昂弥先輩の部屋のドアを開け放ったのだった。
「ここが昂弥の部屋。どうぞ、入ってー」
「え、こんな、勝手に」
「あーもう、ぜんぜんオッケー!」
カジュアルな関係を築いているのだなあ、と感心せずにいられない。
わたしは、お兄ちゃんはおろか、侑月の部屋ですら、部屋の主が不在のときは入るのをためらうというのに。
それでも仁香さんがずかずか足を踏み入れるので、いつまでも廊下で突っ立っているのも違う気がして、同じようにおじゃまさせてもらった。