アイ・ラブ・ユーの先で
「俺もだよ」
それなのに、どうしてあなたはそんなにも、世界に対して優しくいられるの。
大きな愛情の傘を、惜しみなく、他人に傾けてあげることができるの。
「おまえの存在そのものに、何度救われて、生かされてきたかわからない。
いまにも泣きそうなのを必死にこらえながら、こんな俺を慕って、頼って、無邪気に笑いかけてくれた“阿部佳月”の横顔を思い出しては、
あいつとの約束を守るまではなにがなんでも生きていようって、何度も、何度も、踏ん張れた」
大きな手のひらが抱きしめ返してくれる。
「会いたかった」
お互いの存在を確認するみたいに、これ以上ないというほどに、きつく抱きあう。
「たぶん、この瞬間を待ってた、ずっと」
できることなんて、あげられるものなんて、
限りなく、なにもないのだろう。
だけど、わたしはもう、何者にもなれなかったわたしのままじゃないはずだ。
この人を幸せにしたい。
この人を傷つけるすべてのものから、守りたい。
きっとわたしはそのために生まれてきたのだ、と。
どれほど強靭なシェルターよりも強く、どれほど柔らかな毛布よりも優しい、
世界にたったひとつの腕のなかにいる、いまこの瞬間だけは、そう自惚れていたい。