アイ・ラブ・ユーの先で
軽い感じに手のひらを振りながら、へらりと笑っているのは佐久間澄己先輩だった。
こんな炎天下でも清涼感たっぷりのイケメンフェイスに気を取られていたら、次の瞬間、それがガクンとうしろに引きずられていったので、思わずおかしな声が出る。
「なんでおまえが第一声をしゃべるんだよ」
一国の王子のように真白な首根っこを容赦なく掴むのは、昂弥先輩だ。
「ええー? 昂弥が遅いだけじゃない?」
「うるせえな、いちばんの外野は引っ込んでろ」
「ほんっとーに昂弥って手厳しいよね」
「澄己にだけな」
言い合うふたりになど目もくれず、興味なさそうに押し黙っている奥先輩が、ふと結桜を見つけたのが視界の端に入りこむ。
べつに、嬉々として声をかけたりしない。優しく笑いかけもしない。
でも、ふたりはこの長期休暇中にたしかに会っていたのだなあと、そのまなざしを見ただけでなんとなくわかってしまうのは、なんだかとても不思議だった。
やっぱり、ちょっとくらいは脈アリなんじゃない?
無責任なやつになりたくないので、いまは口にしないで、心のなかでだけつぶやいておく。
「ねえ昂弥ー、おれも同行しちゃダメ?」
ずかずかとこっちへやって来る大きな影のほうへ視線を戻したら、いっしょに佐久間先輩もついてくるところだった。