アイ・ラブ・ユーの先で
細長い指先がニャンニャンとたくましい腕に甘えている。
これは、あるていど顔が美しい男子どうしでなければ、とうてい許されない絵面なのでは。
まあ、昂弥先輩のほうは、本気で嫌がっているのを隠そうともしていないけど。
「もし1パーセントでもいいと思ってんなら、俺はおまえの頭を心配する」
「だって昂弥クンがちゃんと女の子をエスコートできるのか、澄己クンてば本当に心配で……」
「その達者な口、そろそろ一生動かせなくしてやろうか?」
「あ、はい、それはマジなやつだね、すみませんでした」
昂弥先輩や、佐久間先輩。奥先輩も、そう。
やっぱり2学年も違うとオトナだな、クラスの男子とはぜんぜん違うな、とこれまで何度も感じたけど、それはもしかしたら先輩フィルターがかかっていたせいなのかも。
友達と心置きなくじゃれているこんな姿は新鮮で、仮にわたしたちが同い年に生まれていたらまた違った魅力があっておもしろかっただろうな、なんて、コッソリありえない想像をした。
「阿部佳月」
いまだに、ふとしたとき、フルネームで呼ばれる。
ぜんぜん嫌じゃないけど、なんとなく疑問に思ってこないだ理由を訊ねてみたら、語感が良いんだよ、とてきとうな感じに返されてしまった。
「はいっ」
「他人事みたいな顔してボケっと突っ立ってんなよ。もう行くぞ」
きょうは、あの花火大会の日から、まるっと2か月が経つ日。
つまり、つきあって、2か月の記念日。
水崎昂弥という男はお察しの通り、そういうのにまったくこだわらないというか、興味もないみたいなので、その事実を伝えても「へえ」といたって淡白な反応だった。
でも、ちゃんと大事にしたい、というわたしの想いは、絶対に無下にしたりしない人。
だから、勇気をだしてお願いしてみた放課後のデートに、入れていたバイトのシフトをほかの人にかわってもらってでも、こうして応じてくれている。