アイ・ラブ・ユーの先で
「昂弥先輩は、わたしの話、佐久間先輩とか奥先輩にしたりしますか?」
「そんなもんホイホイするわけないだろうが」
そんなもん、とは、なんという言いぐさだ。
へえ、とわざと気のない返事をしてパスタをフォークに巻きつけていたら、ふっと笑う無重力な音が落ちてきた。
「入学式の日に“阿部佳月”を見つけたときは、澄己と一慶だけにとどまらず、世界中に言いふらしたくなるくらい嬉しかったけど」
思わず、目を上げる。
その先で視線がぶつかった瞬間、にやりと笑われた。
どう聞いても恥ずかしいせりふを言ったのは昂弥先輩のほうなのに、あまりにも余裕な表情をされているせいで、なぜかコッチの顔面が熱くてたまらなくなる。
いつもぜんぜんアマアマじゃないくせに、たまにこういうダイナマイトな発言をするのは、いったいどういうことなの。
「……ていうか、ほんと、よくわかりましたよね、わたしだって」
「ひと目でわかるだろ。そんなヨレヨレのティラノサウルスを鞄にぶら下げてる女子高生は、たぶん全宇宙さがしてもおまえしかいねえよ」
隣の席に置いていた黒いリュック。
そのジッパー部分に、クチビルといっしょにつけているティラちゃんへ視線をむけながら、先輩がきゅっと目を細めた。