アイ・ラブ・ユーの先で


やれることは、自分でやる。できる範囲で。


座右の銘だなんてかっこいい呼び方はできないけど、そういう気持ちがずっと自分のなかにある。

言い訳みたいに後半に言葉がくっつけてあるのは、自分のこと、それほどデキるやつだとは思っていないから。



――そう、たとえば、こんなふうに。


突きぬける青い空。燦燦(さんさん)と降りそそぐ太陽。やさしく包みこんでくれる春の風。
世界のどんな場所まででも続いていそうな、海沿いをなぞって伸びる一本道。


いまわたしは、間違いなく最高のロケーションのなかにいるはずだ。

そして同時に、いまわたしは、間違いなく最低の愚か者である。


なぜなら、この映画みたいに輝いている景色のど真ん中を、なりふりかまわず全速力で走らなければならないのだから。


「最っ低!」


誰にぶつけられるでもないけど、どうしても叫ばずにはいられないので、なけなしの文句を空に向かって垂れた。

どこにも当たらないまま反響もしないで、それは海に落ち、跡形もなく溶けて消えてしまった。嘘のように。誰にも届かないままに。


悲しくなる。いらいらする。むしゃくしゃする。

どうして、わたしばっかり。


いいや、違う。わたしがぜんぶ悪かったのだ。

わたしが、どんくさくて、要領が悪いから。
子どもっぽいのを嫌がって、上手に頼み事もできないから。

だから、こんな大切な日に朝寝坊した挙句、遅刻しそうになっているわけだ。


高校の入学式という、人生においてとても重要な節目の日に。

< 3 / 325 >

この作品をシェア

pagetop