アイ・ラブ・ユーの先で
やれることは、自分でやる。できる範囲で。
座右の銘だなんてかっこいい呼び方はできないけど、そういう気持ちがずっと自分のなかにある。
言い訳みたいに後半に言葉がくっつけてあるのは、自分のこと、それほどデキるやつだとは思っていないから。
――そう、たとえば、こんなふうに。
突きぬける青い空。燦燦と降りそそぐ太陽。やさしく包みこんでくれる春の風。
世界のどんな場所まででも続いていそうな、海沿いをなぞって伸びる一本道。
いまわたしは、間違いなく最高のロケーションのなかにいるはずだ。
そして同時に、いまわたしは、間違いなく最低の愚か者である。
なぜなら、この映画みたいに輝いている景色のど真ん中を、なりふりかまわず全速力で走らなければならないのだから。
「最っ低!」
誰にぶつけられるでもないけど、どうしても叫ばずにはいられないので、なけなしの文句を空に向かって垂れた。
どこにも当たらないまま反響もしないで、それは海に落ち、跡形もなく溶けて消えてしまった。嘘のように。誰にも届かないままに。
悲しくなる。いらいらする。むしゃくしゃする。
どうして、わたしばっかり。
いいや、違う。わたしがぜんぶ悪かったのだ。
わたしが、どんくさくて、要領が悪いから。
子どもっぽいのを嫌がって、上手に頼み事もできないから。
だから、こんな大切な日に朝寝坊した挙句、遅刻しそうになっているわけだ。
高校の入学式という、人生においてとても重要な節目の日に。