アイ・ラブ・ユーの先で


視界が先輩をとらえるたび心臓が縮まる感覚がするのは、コワイ気持ちがあるからじゃない。

わたしの心は、悪い人ではなかったはずの先輩のほうを、信じたがっている気がするんだ。


「あの人って、なんだろうね? 中学のころも一部の女子から人気あったんだよ」


やっぱりヒトは見た目なのかなあ、と、結桜はのんびり言った。

どうやら彼女にとって水崎先輩はぜんぜんタイプの男ではないらしく、良さが本当に理解できないみたい。


「どうだろうね。危なっかしい雰囲気とか、ついてまわる信憑性のない噂のミステリアスさとかも、魅力を助長してるのかもよ」


わかったようなことを言ってしまった。
チガウと断言しておきながら、これじゃまるで少しくらいはその気があるみたいだ。


「あー、なるほどねえ。キケンなオトコ、みたいな感じかあ。わっかんない」

「結桜はどういう男の子が好きなの? ていうか、彼氏とか、いるの?」

「いないよう、いない! 中3のとき野球部の男子とチョロっとつきあってたけど、ほんと、チョロ~って感じでたいしたことなかったし」


もしかしたらむこうは本気で結桜のことを好きだったかもしれないのに、なんという言いぐさだ。


「ウチはねえ、屈強そうな男が好きだな」


なんだって? ぜんぜんイメージがわかないぞ。

わたしがあんまりキョトンとしていたのか、結桜は「筋肉質な感じ」と付けくわえた。

補足してもらってもいっこうにイメージがわかない。
なにがって、結桜がそういう男子を好きになる図が。

だって、原宿にいそうなサブカルお洒落ボーイみたいなのが好きなのかと、勝手に思っていた。

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