アイ・ラブ・ユーの先で
ずっと続いていく旅の果て
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「昂弥先輩。これまで、たくさんの約束を守ってくれて、本当にありがとう」
どれくらいの時間が経っているのだろう。
月が生みだす影のゆらめきを見て、お互いの呼吸がずいぶん整っていることを感じる。
腕をほどくと、向きあって座り、手を握った。
「あのとき、4日間、毎日お見舞いにきてくれてありがとう。青いティラノサウルスを目印にして、ちゃんとわたしを見つけてくれて、ありがとう」
一生許してもらえなかったらどうしよう、とどきどきしながら顔を覗きこむ。
だけど先輩はもう泣いていなかった。
ほっとした気持ちと、残念な気持ちが、半分ずつ。
「でも、わたしね、まだまだ叶えてほしいことがたくさんあるんです」
みんなで折った赤いハート。
紙袋をひっくり返したらものすごい勢いで出てきて、冷たいフローリングに小さな山を作ったそれを、先輩が驚いたように見つめた。
「このピシッとした形を折ってくれたのは、奥先輩です。この折り目のゆるいのが佐久間先輩。こっちのが結桜で、これが、仁香さん」
指をさし、ひとりずつの名前を口にするたびに、彼は噛みしめるようにうなずいてくれた。
「中身はぜんぶ、わたしから昂弥先輩へあてた“叶えてほしいことリスト”です」
ためらいながら、それでも先輩の手がひとつのハートを拾いあげる。あ、それは、わたしが折ったやつ。
ゆっくり、丁寧な動作で折り目をほどいていくその手を、もうあの男とよく似ているとは、まったく思わなかった。