アイ・ラブ・ユーの先で


――“いつか一緒にハワイに行ってください”



「は?」


少し笑った先輩が声を出した。

予想外におもしろかったのか、ひとつ、またひとつ、先輩が赤いハートを手に取っては、開いていく。



“いつか「昂弥くん」って呼ばせてください”

“人ごみではできるだけ手をつないでください”

“一緒においしいプリンめぐりをしてください”

“なにがなんでもいつかおそろいコーデをしてください”

“わたしの手料理を食べてください”

“彼シャツをさせてください”

“隣でウエディングドレスを着させてください”

“いつかおばあちゃんになった姿を見てもがっかりしないでください”



「どこまでずうずうしいんだよ、おまえ。しかもいくつかネタ切れっぽいやつもあるな」

「ネタ切れとは失礼ですね。なんなら100個じゃ足りないくらいでしたけど」


先輩が開いて読み終わったのを追いかけるように再び閉じていったら、どれにどのお願いが書いてあったのか、もうわからなくなってしまった。


「折り紙の裏のお願いごと、叶えてくれますか? 100個、ぜんぶ、ぬかりなく」


へちゃけたウサギといっしょに机の上に置いてある、少しだけ色あせたハートを持ってきて、足元の山にそっと追加する。


「1個目のお願いごとと同じように、叶えてくれますか?」

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