アイ・ラブ・ユーの先で


「あのね、『さとくん』って呼んでた、これは確実」


なんとか期待に応えられたのか、結桜はみるみる目を輝かせて、うれしそうにふわふわのお団子を揺らしたのだった。


「じゃあ、サトシとか、そういう感じの名前かな?」

「わかんないけど、そうかも」

「ええ、ちょっと! がんばれば探せそうじゃない!?」


探偵ばりに腕まくりをしはじめた結桜に、そうかも、ともういちど返した。


会えるなら、会いたい。

ありがとうと心の底から伝えたいし、いまどんな男の子になっているのかとか、入院していたお母さんのことなんかも、できれば知りたい。


でも、もし覚えているのがわたしだけで、さとくんのほうはわたしのことなんかすっかり忘れてしまっていて、オマエ誰、とか言われたら、ショックで立ち直れない気がするから。


だから、心の半分では、思い出のままでいいとも感じているんだ。

思い出のまま、きれいなまま、手をつけないで、なにか苦しいことがあるたび、あの短い4日間のことをどこかで心の支えにして、生きていけたら。


それだけで充分だ。

それだけ大切なものを、さみしさに潰されそうだった7歳のわたしは、あの子からもらった。


ずっと、ずっと、初恋だ。


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