アイ・ラブ・ユーの先で


「あのねえ、お姉ちゃんに相談しようと思って!」


屈託なく笑った侑月の小さめの手が、なにかをこちらに差しだした。

A4サイズが見開きになっているカラフルなチラシ。

よく見てみると絵の具や彫刻刀、裁縫セットといった懐かしのラインナップが載っている。どうやら学校で必要なもののカタログらしい。


「どれにしようか悩んじゃって」


いいなあ。
ぜんぶ、新しいもので揃えてもらえるのか。


わたしは否応なく、お兄ちゃんからのお下がりを使っていた。

まだ使えるから、と言われてしまったものはしょうがないし、まだ下に侑月が控えているのに、買い直してもらうのも忍びなかった。


もしかしたら侑月も使うのかも、と思ってぜんぶけっこう大切に扱ってきたけど、こんなことなら遠慮なくガシガシ使えばよかったかな。


「なんで? 侑月の好きなのにしたらいいじゃん。ないの?」

「うーん。あるんだけど……侑月の好きなやつだと、ちょっと子どもっぽいかなあと思って」


なるほど、どうやら妹は“相談”でなく、“確認”のために友達と連絡をとりあっていたらしい。


去年まで自分も同じ場所にいたから、少しだけわかる。

中学生の女子は本当に敏感で、多感で、あまりにも他人に過干渉だ。
少しでも違うことをしている誰かを見つけようものなら、簡単に排除し、徹底的に攻撃しようとする。


みんなが落ち着いたデザインのものを使っているなか、侑月だけがピンクでリボンでフリフリなのを使っていたら、自分もその対象になりかねないということを、妹は懸念しているのだろう。

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