アイ・ラブ・ユーの先で
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三者面談の日、お母さんから『少し遅れる』と連絡がきたのは、開始予定時間からわずか30分前のことだった。


三者面談期間中は授業がぜんぶお昼過ぎに終わる。

部活に所属している生徒はもちろん練習にむかうし、家の近い生徒はいったん帰宅して、もういちど登校してくることもあるみたい。


わたしのような、家も遠く、帰宅部に甘んじている生徒は、面談までの時間をいろいろ工夫して潰さなければならない。

図書館で勉強や読書をする気にもなれず、なにか飲み物でも買おうかと学校近くのコンビニに入ったところで、お母さんからメッセージを受け取ったスマホは小さく震えたのだった。


【どれくらいに到着しそう? うしろの子もいるから、押しちゃうといけないし、先生に言って予定変えてもらおうか?】

【ううん、いい、このあとすぐ志月の三者面談にも行かなきゃいけないし。そんなに長々と話すこともないよね?】


よね?、と言われても、メインで話すのは先生とお母さんであって、わたしがどうこう判断できることでもない気がするのだけど。


それでも、ほぼ毎日せっせとパートに出ながら主婦業もこなしつつ、おまけに3人分の母親業もしているお母さんがせっかく作ってくれた時間だ。

受験生のお兄ちゃんとの三者面談の予定が入っていたり、お腹を空かせて帰ってくるはずの侑月やお父さんのために夕食を作らなければならなかったり、外せない用事なら、わたしとの三者面談のほかにも腐るほどあるのだろう。

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