アイ・ラブ・ユーの先で


「いい度胸してんじゃん」


からかうように言われたそれは無視して、停車しているバイクのうしろに、ちんちくりんの脚を一生懸命伸ばす。

硬いような柔らかいような黒いレザーにお尻をつけたとたん、内臓をぜんぶ撫でながら上がってくる、小刻みな振動を感じた。
もう後戻りできないと覚悟を決める。


「ほっ、本当に間に合いますか!」

「間に合う。そのかわり飛ばすから、ちゃんとつかまってろよ」


手首を引っぱられた。強制的に彼のお腹にぐるりとまわされたそれを、反射的にしっかりホールドしたのは、間違いなくわたしの意思だ。


首が後方にガクンと落ちた――気がした。

ものすごいスピードで走り始めたバイクの後部座席に押しつけられながら、わたしは数分のあいだ、泣くのもすっかり忘れて、声も上げられないで、呆けきっていたと思う。


本当に、怖かった。死ぬかと思った。

もう二度とバイクになんか乗るものか。

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