アイ・ラブ・ユーの先で
「ちょっと待ってろ」
受話器越しにそう言われた数十分後、まさかとは思ったけれど本当に先輩が現れたときは、盗聴器のみならず、もしやGPSまでつけられているのでは?と本気で心配になった。
「長いこと暗いなかで待たせて悪いな」
いやいや、そんなことを謝られるより前に、釈明してほしいことがいくつかあるわけで。
「あの、つかぬことをお伺いしますが……」
「ああ。話してて外の感じがしたから」
こちらが最後まで訊ねる前に、先輩は答えをくれた。
だからといって、果たしてピンポイントでこちらの居場所を突き止められるものなのか。
「で、最初に浮かんだのがここだった」
そう言われてやっと思い出す。
そういえば、おうちだというお洒落なカフェでプリンを食べさせてくれた日、バイクから降ろしてもらったのがこの公園だった。
「つーか、なに、おまえ、その格好」
「え?」
指をさされて目を落とす。
デカデカと意味不明の英語がプリントされたTシャツに、ださい中学時代のジャージと、お母さん愛用のオバチャンくさいサボ。
おまけに頭の上には、年齢に見合わなさすぎるウサギがくっついているんだっけ……。
「……なんでしょうね、この格好は」
「いや、さすがに気ィ抜けすぎだろ」
ちょっと笑った先輩は、空いていた右側のブランコに、横柄に腰かけた。金具がガシャリと音を立てる。