恋化石(仮)
内向的な性格が災いしていたのかとばかり思っていたが、それももうよくわからなくなってしまった。
容姿も性格も何ひとつ魅力的なものがない。
漫画と乙女ゲームと女性アイドルが好きなんて言ったら、オタクみたいに聞こえるけれど、胸を張って熱弁できるほどの知識はない。
アイドルだって、一見アクティブな趣味みたいにも思えるが、いわゆる現場と称されるライブ会場には、足を運べない。
一人で行くのもなんだか怖いし、Twitterを使って趣味の友達を広げられるほどの元気もない。
あくまでDVDを購入して楽しむのを貫いていたら、それが在宅と呼ばれる応援の仕方だと言うのも、人に言われて初めて気づいたくらいだ。
かと言って、外見を何も取り繕わないオープンさも持ち合わせていない。
化粧もするし、美容院にだって行く。
見られもしない下着はそこそこ値の張るものもあるし、安いと高いにメリハリをつけた服装だって気をつけている。
卑屈なのがいけないとはよく言われたもので、否定し続けた今、ようやく自分に自信がないことに気づいた。
誰しも自分に自信がないのだとばかり思っていたのだけれど、そうではない。
自信があるのとないのとを、バランスよく所持しているのだ。
気づいたところでもう遅い。なんて思うのも、卑屈だからなのだろうか。
「世の中の男がまだ柚衣ちゃんの魅力に気づいてないだけよねえ」
「一生気づかれないまま三十になりそうだけどね」
ふふふ、と笑みを浮かべながら、周囲を困らせない程度の自虐を入れた。
悲しいやら気まずいやら、自虐は自分の心を抉り、かき消すようにお酒を流し込んだ。
泉月も希薄な柚衣子の恋愛経験を知っている、数少ない友人の一人だ。三人とかさまししたつき合った人の人数が、実はたったの一人であるということを知っている。
いつしか茉莉花と飲んだときに、その場に居合わせた泉月も一緒に良い気分でお喋りをしていたのだが、当時荒れていた茉莉花の暴飲暴食ならぬやけ酒により、ぺろりと漏らしてしまったのだ。
処女であることは死守してくれたのだけが幸いだ。
「ふふ。柚衣子ちゃんなら歳を重ねてもずっとかわいいわよお。だってほら、お肌つるつる」
手のひらで頬をさらりと撫でられる。パーソナルスペースが近いのか、泉月は男女関係なくスキンシップに遠慮がない。
柚衣子も嫌悪感を示すこともなく、「ありがとう」と目を細めていた。