浅葱色の恋心

別れの選択   下

屯所が西本願寺に移転してからも

毎月届く、尚忠からの文に

返事を出せなくなった



土方と君菊に、娘が生まれ




君菊の世話をするため
彩華がひとりで外出できるようになった



屯所と君菊の処を行き来しているうちに

忙しくしていれば

寂しくも、苦しくもなくなった



君菊と赤子が、休んでいる横で

文を書いてみることにした



〝兄上様

私は、元気にしております

返事は、出せないので

お便りは、ご遠慮下さい  彩華〟




我ながら下手くそな字だと、苦笑いしつつ

屯所に戻る途中、その文を託した




屯所に帰り

夕餉の支度中


今まで貰った文と
巾着袋を2つ火にいれた






翌朝





「彩華 すまねぇが君菊を頼むな」

「はい いってらっしゃいませ」





勧誘が上手くいっていない江戸へ

土方が旅立った





土方が留守中


仕事におわれた一は、彩華と
顔を合わせることもなく過ごした



彩華は、君菊以外と話をしていなかった





「彩華?どうかした?」


「???どうして?」


「最近、あまり話をしないから」



君菊にそう言われると

話して聞かせるようなこともないなと困る



「土方さん、早く帰ってくるといいね
江戸の土産話を聞くといいわ」



「楽しみやわぁ 速う帰って来たらええな」









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