浅葱色の恋心
【彩華】




〝我が妹 彩華へ

やはり寂しく、筆をとった

かわりはないか

御守りの効果は、続いているか

父母から、字が書けないことを聞いた

確かに下手くそな字の文が来たなと

納得した時

江戸で藤堂さんに会ったことを思い出した

藤堂さんは、優しい方だろう

代筆を頼め

時々でいい

父母の為にも、返事がほしい
   
        永井尚忠〟




やはり文の中でも威張ってる

兄であり

良き理解者であった人




「尚忠…」





久しぶりに泣いた


笑おうと決めていたのに

笑うことすら忘れて働いていた





平助が非番の日


「平助 お願いがあるの
あのね 兄上に文の返事を出したいの…」



「何で、俺に頼むんだよ!?
彩華 無神経だよ!
江戸にいるのは、俺も同じだった
俺には、文なんてくれなかったのに!」



「ごめんなさい」






それから、平助は

私を避けるようになった






町で、偶然 置屋の女将に出くわした





「帰っておいで!!
そんなに窶れて!
熱があるのに仕事なんてダメよ!
私が世話してあげるよ!
永井様とは、江戸からの古い付き合い!
私に任せなさい!!」





どこでもいい


逃げたかった






「置屋に戻ります
お世話になりました」






皆に不思議がられ

止められたけど




ここに、私の居場所なんてないと思った





どこでもいい



楽になりたい





















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