浅葱色の恋心
【一】




走りだそうとする俺の目の前で


彩華が刺された




彩華が、ニコリと笑い



「一 怪我ない?」



なぜ、加納が…



なぜ、彩華が…



気が動転して、声が出なかった



「無事だぞ!」



代わりに永倉君が答えた




「よかった!一が無事で…」


ぐにゃりと崩れる彩華の体を支えながら

座る


「彩華!何で俺を庇ったりなんかした!!」





「ふふっ 一が… 好きだからだよ」





ヘラヘラ笑いながら


クタリとした





「彩華!」





原田君に肩を借り

彩華と同じく腹を刺された平助が


俺の前に座った



「あれは、加納じゃない 伊東さんだ
伊東さんは、加納の力が欲しくて
加納の力を手に入れる為に
体を乗っ取ったんだ それを阻止しようと
頑張ったんだけど… これだ」



ニカッ と笑い


腹を指さす




「彩華が迎えに行くと言ったのに…
何でおまえたちは、すれ違ってばかり…」



「へへっ ごめん
一 彩華を幸せにしてやってくれ!
一しか頼めない!」



平助は、俺に櫛を押し付けた



「何言ってるんだ?彩華は…もう」



「一!頼んだよ!」







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