漂う嫌悪、彷徨う感情。

立ち上がり、勇太くんと一緒に勇太くんのデスクに移動しようとした時、

「それ、ワタシがやりますよ。 もう少しで手空きますから」

ワタシの隣のデスクの小田ちゃんが、勇太くんの腕を掴んだ。

「ありがとう。 でも大丈夫だよ。 木原さんには、前にもプレゼン資料作りの手伝いしてもらった事があるから、前の資料見ながら木原さんにやってもらった方が多分早い」

勇太くんが、自分の腕を握っている小田ちゃんの手をそっと下ろした。

「2人共気まずいだろうから気利かせてあげたのに。 美紗に仕事を頼める程に立ち直れるまで、昨日散々慰めてやったのは誰だと思ってるんですかね、佐藤さんはー」

小田ちゃんが唇を尖らせ勇太くんに意味深な目配せをした。

「その言い方、誤解を招き易いからやめてくれない??」

勇太くんの表情が曇る。

「誤解って?? 事実そのままじゃないですか。 ワタシの肩に頭乗っけて甘えてきたの、佐藤さんじゃないですか」

そう言いながら、小田ちゃんが少し意地悪な笑顔をワタシに向けた。
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