漂う嫌悪、彷徨う感情。

「・・・じゃあ、小田ちゃんお願い」

涙を零してしまわぬ様に、トイレに駆け込もうとこの場を離れようとした時、

「ちょっと待ってよ。 オレは木原さんに頼んだんだけど」

勇太くんがワタシの二の腕を掴んだ。

「・・・ワタシじゃなくても資料作りは出来るので・・・もし、人手が足りない様なら声を掛けてください。 お手伝いしますから。 ・・・ワタシ、ちょっとお手洗いに・・・。 すみません」

ここで泣いてはいけない。 涙を見せて『みんなにシカトされて、仕事さえさせてもらえない可哀想な人』になって憐憫の情を稼ぐ様な真似はしたくない。 徹底的に悪者になって、勇太くんにこそ同情票を集めたい。

でも辛い。

ワタシの腕を掴む勇太くんを振り切り、トイレまで走った。
< 124 / 312 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop