漂う嫌悪、彷徨う感情。
トイレの個室に逃げ込み、鍵をかけると、堰を切ったかの様に涙が溢れ出した。
このやり場のない辛さを、悲しみを、苛立ちを、どうしたら良いのだろう。
ぐしゃぐしゃになった顔を拭こうとトイレットペーパーを握りしめた時、
『良く踏ん張ったね。 偉かったね』
ちょっと前に掛けられた、日下さんの優しい言葉をふと思い出した。
「・・・・・・助けて。 日下さん」
悪者でいい。 悪者でいなければいけない。 これでいい。 だけど、自分を肯定してくれる誰かに縋りたかった。 このままでは自分が崩れてしまいそうだから。 崩れてしまっては、勇太くんを守れない。
ポケットから携帯を取り出し、日下さんのアドレスをタップする。
1コール鳴ったところで我に返り、慌てて終話ボタンを押した。