漂う嫌悪、彷徨う感情。

「本当に何もないです。 ただの間違いです。 凡ミスです。 泣いてもいません」

日下さんの声を聞いたら、何故だかホっとして、本当に涙が落ち着いてきた。

『ねぇ美紗ちゃん。 仕事中の人間に電話掛けてきておいて嘘吐くって、人としてどうかと思うよ』

さっきまで笑っていた日下さんの声のトーンが、少し低くなった。

ワタシの軽率な行動に、日下さんが怒るのは当たり前だ。

「・・・すみません。 そうですよね。 迷惑掛けておいて失礼ですよね。 さっきちょっと、我慢しきれないくらいに辛くなってしまって・・・思わず日下さんに電話してしまったんです。 本当にそれだけです。 でも、日下さんの声を聞いたら持ち直しました。 ありがとうございました。 本当にもう大丈夫なので、日下さんは仕事に戻ってください。 本当にすみませんでした」

日下さんに申し訳なくて、電話なのにも関わらず、謝りながら頭を下げた。
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