漂う嫌悪、彷徨う感情。
結託する近親者。





「ねぇ、小田さん。 小田さんの気持ちは有難いけど、仕事は仕事だし、本当に嫌だったら美紗に仕事振ったりしないよ、オレ。 変に気を利かせなくてもいいよ。 小田さんやみんなが美紗を良く思わない気持ちは理解出来るけど・・・でも、美紗は本当に何も悪くないんだよ。 全部誤解で・・・。 だから、あんまり美紗を責めたり、疎外するような事はしないでほしい」

美紗がトイレに行ってしまった為、美紗に頼もうと思っていた仕事のファイルを小田さんに手渡す。

「ちょっと何言ってるか分からないんですけど。 しっかり浮気を見せつけられて、『美紗は何も悪くない』って言われても、『そうですね』って誰が同調するんですか??」

オレから受け取ったファイルをパラパラ捲りながら、不服そうな表情を浮かべる小田さん。

「例え誤解じゃなかったとしても、小田さんが美紗に何かをされたわけじゃないでしょ?? 小田さんが怒るのも、美紗の仕事に横入りするのも違うと思わない??」

「・・・何それ」

『パタン』と大きな音を立ててファイルを閉じた小田さんが、睨む様にオレを見上げた。 その目は薄ら涙を帯びている。
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