漂う嫌悪、彷徨う感情。
「はぁ?! こっちはデートの時間調整してやったのに、何ソレ」
『チッ』と舌打ちしながら立ち上がり、リビングを出て行こうとした真琴の肩を、親指がめり込む程に強く掴み、行く手を阻んだ。
「痛った!! 何すんの?!」
「オマエ、美紗の事知ってただろ」
オレにブチキレる妹に、オレも静かに怒りを返す。
「え?? どういうこと??」
美紗は知らない間に帰ってしまうし、兄妹は突然喧嘩を始めるしで、オトンとオカンはわけが分からないと言った様子だった。
そんな両親に丁寧に事の経緯を説明出来る心の余裕など、あるわけもない。
「美紗に『真琴ちゃんにいじめられたー』とか言われたの?? 言っておくけどアイツ、学校の全員から嫌われてたからね。 お兄ちゃん、なんであんな嫌われ者と結婚しようと思ったの?? まじでやめた方がいいって」
『痛いって言ってるでしょ!!』と真琴がオレの手を振り払った。